会社概要

住まい再考

【096】 「アプローチ」


アプローチの新緑が、住まいをひときわ活き活きとさせています。

道路から玄関まで、あるいは敷地の入口から玄関までの進入路をアプローチといいます。ここは個人の場所でありながら、他人の目にさらされる機会の多い大事な場所でもあります。

進入路といってしまえば実用的な道を想像させますが、実用のみでは趣に欠ける場所です。これから訪れる玄関の印象を高める場でなくてはなりません。そこで初めて、アプローチの使命が果たせることになるのです。

誰もが初めて訪ねる家で、アプローチを通り過ぎ、玄関に至るまでのデリケートな心の変化を体験しているでしょう。そして、ポーチに立ったときの、期待と不安が入り混じった複雑な気持ちを味わったことがあるはずです。そこに漂う美しいものが、訪れる人の心をどんなに安らかにし、また快くしてくれるか知れません。谷口吉郎先生はそこを「訪問の前奏曲」といって讃えているほどです。

現実的な話になりますが、新しく作られる住宅においては、予算の関係から門やアプローチを後回しにすることが多くなりがちです。しかし、当初は本や雑誌に紹介されているような完備したアプローチでなくてもよいのです。折を見て少しずつ、自分で客を迎える気持ちを表しながら形作っていく、そんな方法でも年月が経つにつれて結構感じが出てくるものです。今、私達を楽しませてくれているアプローチにも、そんな方法で造られたところもあることでしょう。ただし、新築当初といえどもアプローチの足元だけは、雨のときなどにも足を汚さず安心して歩けるようにしておきたいものです。

最近、奥行きのあるアプローチを造れるような広々とした敷地は望めなくなりました。「もう少し敷地が欲しい」と思いながら家を建てる人が多いと思います。たとえ狭くてもそこは玄関前の大切な場所です。その場にふさわしい方法をとること、すなわちそこの広さや環境に調和したアプローチにすることが、訪ねてくる人々に好感を与えることになるのです。これも、来客をもてなすひとつの方法です。

降幡廣信