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住まい再考


食欲の季節になって、秋刀魚が秋の味の話題をさらっています。焼いた秋刀魚の味が格別だからでしょう。その味は、火に落ちた脂から上る煙が、再び秋刀魚を燻すところにあるといいます。いうなれば、秋刀魚の味には煙が不可欠ということなのです。遠慮なくもくもくと煙を出しながら強火で焼いたからこそ、秋刀魚は旨かったのです。

しかし、最近は煙を嫌う台所が増えています。煙で室内を汚さないようにして、いつまでも明るくて格好の良い台所にしておきたいからです。秋刀魚を遠慮なく焼いたのでは、煙を排出する設備の効果が上がらず、煙が天井に漏れて汚れてしまいます。結局、遠慮しながら焼いた、本当の味の出ていない秋刀魚で我慢することになるのでしょう。

秋刀魚を焼くにも遠慮のいらなかった昔の日本の台所を思い浮かべながら、今日の台所にちょっと触れていることにいたします。

台所には三つのタイプがあります。台所が独立しているもの。DK(ダイニングキッチン)といって台所と食堂がひとつになったもの。これは台所の内部で食事ができる、あるいは食事をする場所に台所があるともいえるものです。LK(リビングキッチン)はDKに居間としての要素を加えたものです。

DK,LKは戦後の住宅難の折、日本の住宅公団があみ出したものです。当時の住宅は居住部分が六畳二間で、一室は食事室と寝室を兼ねることになっていたのです。しかし、食べるところと寝るところが同じというのは好ましくないとして、限られたスペースで「寝食分離」を試みることになり、食事を台所でするというDK、LKが生み出されました。

確かに、台所と食事室が一室にまとまると床面積も少なくて済み、食事を運ぶ手間も省かれることになります。これが、狭い住宅に住みながら働くことに重点を置いた、日本人向けの機能を持っていたために一般化し、今に至っているといえましょう。

今日では、日本人のゆとりを求める指向性からか、台所のもつ本来の機能に加え、食堂・居間に必要な雰囲気というものがことさら重要視されるようになっています。そのことから作って口を満足させようとする思いと共に、汚さずに目を楽しませようとする思いが心の片隅にあるのでしょう。

秋刀魚の煙を気にする台所を多くしている理由もそんなところにあるのでしょうか。
降幡廣信