
住まい再考

「しつらえる」という言葉は日常生活の中で用いられている言葉ですが、諸外国とは違う、日本の生活を言い表している言葉でもあります。
日本人は、朝昼晩、刻々と移り変わる一日の時間の中で、また、春夏秋冬という時の変化の中で、さらに折々の場面に合わせて調度類を整え生活を組み立てて暮らしてきました。
昼間はちゃぶ台を部屋の中央に配して使われた居間が、夜には部屋の隅に台を片寄せ、寝布団をのべて寝室として使われ、客間は、大勢の来客の時には、続き間の建具を取りはずし、広間に変えて対応するなどはその一例です。
季節の違いの中でも室内の構成が変えられます。冬になればちゃぶ台に代わって炬燵が造られ、部屋の襖や障子を閉め切ってその炬燵を囲むことになります。
春になると、障子は開け放たれて外の明るい春の息吹が部屋一杯に取り入れられます。
暑い夏には障子はもとより硝子戸まで開け放たれ日除けの簾が掛けられ、襖や障子が簾戸に取り替えられることにもなります。座布団も麻の薄手のものに変えられたり、暑い夏を少しでも涼しくしのぐ工夫が行われます。
さらに、桃の節句、端午の節句、そして七五三というように伝統的な年中行事でも室内の調度品等の構成が変わり、雰囲気が変わります。
このように我が国では日常生活の中の昼と夜、また来客によって、また季節の違いや様々な場面で、それぞれに似合った空間を構成してきました。
まさに、日本人の暮らしそのものが室礼の連続によって成り立っているということができるのです。
このような、折目節目に手軽に、また、自由自在に変えられた室内の構成は、洋式ではあり得ないことです。花の取り替えや、額や置物くらいは変えることができたとしても、重い椅子や、家具調度類を動かし、室内の構成を変えることは不可能に近いからです。これができるのも、日本の住まいの空間の柔軟性によるものといえましょう。独特の柱と梁による構造と畳の床、壁の代わりに使われている襖や障子の引き違い戸、そして、何もないシンプルな空間だからこそ多様な変化に対応できたのです。
降幡廣信














