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住まい再考

【107】 「春」


冬が去り、寒い空気が明るく暖かい空気と入れ替わりました。そんな空気に誘われて、桜の花が一斉に花をほころばせました。

もうすぐ木々の若葉による緑の競演も展開されます。そして青空の下、薫風を受けて泳ぐこいのぼりの日本的風景も我々の目を楽しませてくれることでしょう。これらを演出するのは正に明るい光と清潔な暖かい空気にほかなりません。

日本人はそんな空気をふんだんに使い、その恵みを身近に感じながら生活してきました。

干し物もそうです。豊かな陽光やさわやかな風にさらして乾燥させた洗濯物を身にまとったとき、衛生的な清潔感には格別なものがあります。

また、陽光や新しい空気をいっぱいに吸って乾燥した布団の快さには、太陽と新鮮な空気の匂いが心を豊かにしてくれます。さらに陽光で乾燥し、塵や埃を吐き出した畳からは、古さを忘れさせる自然の恩恵が伝わってきます。

冬は閉め切ってあった家の戸も、春になって、開け放たれると、湿っぽく陰気な気分は一新されます。日本の住まいが外の明るい光や清潔な空気を受け入れやすいように、壁を少なくし開放的に造られているのもそのためです。

これらは、日本人が長い歴史の中から、豊かな自然の恵みをとり入れる生活スタイルを作ってきたからにほかなりません。自然の恵みをより多く受け取る生活方法が、世界に類のない清潔な住まいを造り上げ、世界に類のない清潔な暮らしが行われて来たのです。そして、きれい好きな日本人が生まれてきたのもそのためなのです。

春になると団地のベランダにずらっと洗濯物が並べられている、という日本的な風景が特に目立ちます。ベランダに物を干すことを禁じているところもあるほどの美観にうるさい国々と比較されたとしても、その風景はなくならないことでしょう。清潔好きな日本人にとって陽光やさわやかな空気の気分の良さと安心感は、乾燥機では得られないからです。考えてみれば、これも恵まれた気候風土の中の美しい空気があって初めて得られることなのです。

自然破壊が進み、紛争のさ中の国がある時、自然の恩恵と平和の喜びを、季節の折々に思い起こす必要を感じる昨今です。
降幡廣信