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住まい再考


今年の夏は異常でした。日本各地のダムの水が枯渇し、今でも各所で給水制限が続いているほど、雨の少ない夏でした。そして、その雨の少なかったことが異常な暑さの原因でもあったと考えられるのです。

平年、日本の降水量は大変に多く、東京では年間約一五〇〇ミリ。二〇〇〇ミリ以上のところも珍しくありません。比較的降水量の少ない松本でも、一〇〇〇ミリ以上です。そのために、日本の夏は高温で湿気が多く、蒸し暑いのです。ちなみに各国の首都の降水量は、ワシントンが一〇〇八ミリ。ロンドン七五八ミリ。パリ、モスクワ、ウィーン等は軒並み六〇〇ミリ前後。カイロではたったの二一ミリです。

本来、日本では雨が地面にしみ込みながら焼けた地表を冷やし、また蒸発しながら気化熱を吸収して空を曇らせたり、気温を下げる役目をしていたのでした。今年は、その多いはずの雨が以上に少なかったために気温が非常に上がったと考えられるのです。ところによっては夏だというのに、乾燥注意報が出されたほどでした。

そもそも、日本の位置は東京を例にとると北緯三六度で、アフリカ大陸北部のアルジェやイランの首都テヘランと同緯度です。その線上の雨の少ない所では砂漠地帯が形成されています。今年、降水量の少なかった日本が砂漠的な気候になったのも当然のことなのです。

日本の住まいは、雨の多い高温多湿の気候に適するスタイルにでき上がっています。軒の深い勾配屋根は斜めに降りつける雨のためでした。また、壁が少なくて開放的なのは、風を通して蒸し暑い夏をしのぐための工夫だったはずです。

しかし、今年の夏の暑さには開け放って通風しをよくする通常の日本の生活方式より、むしろ中東やエジプト地方の乾燥地帯の生活方法が似合っていたと思われます。それは、涼しい朝の空気で室内を満たし、日中は小さい窓を閉め切って暑い空気や日射しや照り返しを室内に入れない方法です。

今年の夏は、従来の日本的な生活では通用しない夏でした。
降幡廣信