
住まい再考
この夏の、異常なまでの水不足が未だに尾を引いています。豊かな良い水に恵まれた生活をしてきた日本ですから、精神的にもどんなに影響を被ったか知れません。生活内容が向上して、水を豊富に使う生活の仕組みができてしまっていますからなおさらです。
水は生活文化のバロメーターとも言われます。厳しい給水制限下で懸念されるのは、その普及がバロメーターそのものになっている水洗便所です。
水洗便所の歴史は、ロンドンに上下水道が完備した一八四七年から始まりますが、日本では明治初年に水洗便器が渡来してからです。都市部には早くから普及しましたが、近年になって漸く地方にも普及してきました。
水洗便所にどのくらいの水が使われるかというと、最も進んだサイホンゼット式のもので1回に20リットルが必要です。しかし、水の使用量を抑えるための工夫がなされて、今日では13~10リットルのものも使われています。
便器の進歩は使用する水量と共に、音の静かな方向へ改良がなされてきました。便器の洗浄音は結構気になるもので、かつて、音の伝わりやすい鉄筋コンクリートのアパートなどでは、隣近所の音がはっきりと聞こえてきたものでした。今日の静けさが家庭にどんな快適さをもたらしたか知れません。
しかし、静かな便器が便所に静けさをもたらしたことで逆に、今度は便所を使用するときの音が耳につくようになってしまいました。その音を消すために、若い女性は公衆便所を使う時、水を流し続けるという話を聞いています。大切な水の大きな無駄遣いです。それがレディのエチケットとして通用しているというのです。静かであればあるほど、便所は節水型ではないのかも知れません。むしろ、以前のように個々のタンクに水をためる音が絶えずどこかで聞こえていた水洗便所の方が気易く使えて、節水型だったのかも知れません。そこで今日は、トイレの水の流れる音を再現して、使用する音をカムフラージュする装置まで使われる時代になりました。
文化生活は時により不便で、また、お金のかかることを、水不足の折、便所を通じて考えさせられました。














