
住まい再考

洋の東西を問わず、ガラスほど今日の住宅の内容を高め豊かにしたものはないと思います。これから寒さに向かう中で、我々が安心して冬を迎えられるのも、ガラスによって明るく暖かい生活ができるからでしょう。
ガラスの特徴的機能は、採光性と透視性にあります。板ガラスのなかった次代、開口部に障子を建て寒い冬や雨の日にも昼間は室内を明るくできた日本とは対照的に、外国の生活は板戸を占めれば、居間でも闇夜のようだったと思います。又、板戸の隙間から寒い風が吹き込むような当時のことを想像する時、ガラスが今日の住宅をどんなに変えたかがわかります。
ガラスそのものの歴史は古く、西暦紀元前数千年の昔とされています。年代のはっきりしているものにエジプトの王様の名を刻んだ玉や香水入れがありますが、それは紀元前一五〇〇年代のものです。しかし、建築に使われた最古の例は、西暦七九年にヴェスビオス火山の噴火で埋没したポンペイの遺跡から発掘された窓ガラスだそうです。
ガラスの歴史を見ると、薄い板ガラスを作るということが至難の業だったことがわかります。その製造方法は、最初はビール瓶の底のようなものをつなぎ合わせることから始まりました。その後、円球を熱しながら吹き、激しく回転させて遠心力でガラスを平らにする方法や、円筒型に吹いたガラスを平らに伸ばして板にする方法などを経て、一八世紀以降板ガラスの製造方法は次第に発達し、二〇世紀に至って現在の方法が完成したのです。
我々の周辺にある戦前の昭和、大正、明治の住宅に使われている透明ガラスを見ると、古い物ほど外の景色のゆがみが目立ち、ガラス面の精度の劣ることがわかります。ここにいたガラスの製造の苦難と進歩の跡が伺われます。
今日、透明板ガラスをサンルーム的に使うアメリカの影響を受け、日本も大きな透明の一枚ガラスを大胆に使うようになりました。しかし日本では古くから模様入りのものや、磨りガラスが多く使われていました。これは、あからさまより奥ゆかしさを尊び、障子を通した光をやわらかくおぼろに使った、日本人の感性が生んだ日本ならではのガラスでした。
今日、我々が住宅にガラスを使う時も、心の底に障子の文化が息づいていることを感じます。これは日本人の共通したガラスに対する思いなのかも知れません。
降幡廣信














