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住まい再考

【138】 「杉」(二)


前回の酒との継がり、さらに箸・菓子箱というように見回してみると、日本人は常に、どこかで杉と肌の触れ合いをもちながら生活してきたのです。

杉は日本特産の植物で、南は屋久島から北は青森にいたるまで、どこへいっても見かけます。

さらに、杉はすくすくのびる木という意味を持つ、名前どおりに、材質は素直で、年輪は直線的に通っているのが特徴です。繊細な日本の建築に、きわめてよくつかわれるのはそのためです。

杉はその産地によって微妙な材質や色調・年輪に特徴をもっています。九州の薩摩杉、霧島杉、本州の吉野杉、春日杉、北山杉、日光杉、秋田杉など、日本人は昔から建築の中にその特徴を認め活用してきました。その一例として春日杉、霧島杉、屋久杉は天井板として最高とされ、秋田杉は造作材や建具材として、北山杉は磨き丸太として高い評価を得てきました。

地味が肥え、雨の多い日本は杉に適しているからでしょう。全国各地において良質の杉が産出されてきました。そのことが、日本のどの地方へいっても杉材が良く使われ、日本の住宅にとって、特に馴染みの深い材料になっているのでしょう。

杉材はローコストの貸家から、最高級の数奇屋建築に至るまで、家の主役として使われてきたのは、多種多様な好みの材料が杉から得られたからに外なりません。その源は、日本人の感性と一致する穏やかな性質と質感、落ちつきのある色合い、さらにはっきりした年輪をともなった木材だからです。

真直ぐにのびる性質をもった杉ですから、素直で直線的な美しさを必要とする柱・造作材に、穏やかで狂わないことが要求される板や下地材に、杉は最適な材料として使われてきました。

一方、長寿である杉は大木になると不思議に複雑な年輪を刻むのです。そのために、杢(複雑な年輪)の天井板をはじめ、中杢、柾(直線の年輪)といった素直な年輪に至るまで、天井板は杉の独壇場といっても過言ではありません。

すくすくのびる杉の木立は、日本の自然の風景をどんなに美しくしているか知れません。その緑の色が四季を素直に表現します。これからの冬、寒風にさらされて杉は緑を褐色に変えて春を待ちます。
降幡廣信