
住まい再考

日本には昔から「桧普請」という言葉があります。この言葉の中には、家を建てるのには檜の材を用いて建てたい、という庶民の願望が込められているのです。その願望には、それ相当の理由があります。
魚を例にとりますと、魚の世界では鯛を王様としてきました。改まった席のお料理には必ず鯛は付きものでした。鯛によって、その場がどんなに格調高いものになっていたか知れません。鯛には、その姿形、そして味においても他の魚にはない格調高いものがあるからです。
魚の世界の鯛が、すなわち木材の世界の「檜」だということです。檜は、肌がきめ細かくて美しく、上品な色艶を持ち、特有の高貴な香りを持っています。さらに大変丈夫な木材である上に」、加工し易く、狂いも少ないのです。日本の木材の中では最も信頼のもてる木材が檜だったのです。こんな檜に、庶民は憧れをもち、そして、檜材を使って造る家に夢を持っていたのです。ちなみに法隆寺をはじめとして、昔の有名なお寺は檜を用いて造られています。法隆寺が世界最古の木造建築として今日に至っているのも、抜群の耐久力をもった檜材で造られていたからです。
伊勢神宮も檜造りです。二十年毎に建て替える筈の木材が、檜としては最高の木曽の材が使われているのです。伊勢神宮に相応しい、木材の王様の檜が使われているのにはうなづけます。そこに漂う神聖さは、使われている木曽檜のもった清潔感と、格調の高い質感によるのです。檜のもった清潔さと、質感は他の木材では代えられないものなのです。
檜は、木曽をはじめ全国各地において産出されます。その色艶や質感が木曽檜より劣るとか、割れ易いとか、産地の気候、土壌によって違いはありますが、日本の檜には共通した良さがあります。その特徴は上品な材質にあります。ですから高級な「檜普請」の座敷からは、うかつに膝を崩したり、不作法のできないような窮屈さが感じられるのでうs。
檜の皮は檜皮(ひわだ)といって高級な屋根材でした。お寺は仏教と共に渡来した瓦で屋根が葺かれる一方、神社は日本生粋ということでしょうか、檜皮が使われているものが目立ちます。檜皮の屋根には、日本的な優雅な趣が漂っています。
降幡廣信














