会社概要

住まい再考

【144】 「開き勝手」


日本の家は引き戸を原則としてきましたが、今日、洋風化の流れの中で蝶番付きのドアーが多く使われる時代になりました。

かつて、中国文化が伝来して間もない奈良朝の頃もやはり開き戸が主になりました。当時は、堅軸回転の開き戸です。平安時代には、また鴨居を吊り元にして上方へ回転させる蔀戸が使われた歴史があります。

開き戸の場合、問題になる点は開き勝手です。本場の西洋住宅をみますと、開き戸は、よりプライバシーの高い空間の側へ開くということになっています。玄関の戸は内側へ開き、廊下と室への出入易さや、開ける時に内部が明らさまに見えないように吊り元を定めるのです。

玄関のドアーを内開きにするのは、外の人がドアーを押して入り、内の人が引いて招き入れることの方が、より自然で美しいからでしょう。又、防犯上の点から、外開きの場合は、蝶番の軸が外側に露出するため、軸を引き抜いてドアーを吊り元から外されることを防ぐためです。戸締りを重視する西洋人にとっては重要なことなのでしょう。

しかし、日本の玄関は外開きが一般的です。

日本では、玄関からの犯罪が西洋程ではない上に玄関で靴を脱ぐために、狭い玄関の履物が内開きのドアーの邪魔になります。

雨が多い日本においては、雨仕舞が悪い内開きドアーでは、雨水を内部へ招き入れることになります。又、寒さも入り易いのです。

さらに日本古来のドアーが、観音開きといって外に開く方法がとられていた、そんな伝統も外開きに関係しているのかもしれません。

かつてパリで西洋の窓が内開きであるのを見て驚きました。雨仕舞の配慮は充分になされていたのですが、雨に濡れた窓を開いたところ、窓に付いていたしずくが滴り落ちて、部屋の床を濡らしたのです。雨の多い日本において、内開き窓はすべきでない、という実感でした。しかし、玄関の内開きドアーは、土間に広さがあり、雨仕舞や寒さの進入に対する配慮がなされれば、大いに結構だと思います。

玄関に限らず、ドアーの開き勝手は大変重要です。吊り元に対し、鍵や、取手の関係がドアーのデザインに影響し、印象を大きく左右するからです。
降幡廣信