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住まい再考

【148】 「外観」


ドイツの木造建築を見ながら旅をして色々のことを教えられました。

訪れた個々の街からはその街特有の性格がはっきり感じられたことです。その原因は、街の過去を説明する古い建物を大切にして街が造られていることによります。そこにある住宅をはじめ諸々の建物は、街の生い立ちや過去、そして今日までの街の歩みそのものだからです。

町の歴史を説明する古い建物によって、全体の統一が計られている街には、独特の雰囲気が醸しだされ、そこに住む人々の気持ちや性格までもが街の雰囲気に左右され影響されていることがよくわかります。

家の外観に対する考え方に日本人と違うところがあるのです。自分の家の外観については、日本もドイツ人も同じに大切にしていると思います。しかし、日本人は「個人のもの」という考えが強く、外観にある公共的意識が欠如していると思います。街や村の印象を決める大切な景観に、私の家が大役を担っているという意識は、残念ながら不足していたのです。

あるドイツの小さい街では、個々の家の外観が、かくまでも街の景観造りに貢献してきたことを見せつけられました。

普通の街の家は、全面の道路に正面を向けて造られます。これは道路から見た街の景観は整えられます。しかし、街全体を一方向から見下ろしたとすると、正面を向いた家と背を向けている家が、立ち並んで見えることになります。

この街では昔から、向かいにある小高い丘が、街の人達の展望台であり、いこいの場でした。この丘からの街の眺望のために、街の景観造りをし、家の正面を丘に向け建ててきたのです。そのため道路から見ると片側は家の正面を向いて立ち並び、片側はお尻を向けて立ち並ぶことになっているのです。

これほどまでして、「我々の住んでいる街は美しく、良い街なんだよ。これからもみんなで、良い街にしていこうよ」と住民に云い聞かせているかのようでした。

その土地、その地方、そしてその国々の住まいの外観は長い歴史を経て本当に美しいものに完成しています。今日は、科学の力や人智によって、過去の形にとらわれることなく新しく変っています。しかし、長い歴史の中での先人の築いた外観には独特の不変性と存在感があって人の胸を打つものがあります。ドイツを旅して強く思わされました。
降幡廣信