会社概要

住まい再考

【171】 「暑さをしのぐ」


本格的な夏になりました。日本の首都、東京がアフリカ大陸北部に位置していることが証明しているように、日本の夏の暑さは別格です。その理由は、暑い上に湿気が多いことからくる蒸し暑さだからです。

この蒸し暑さをしのぐ、日本独特の方法が日常生活の中にとられてきました。それは長い歴史を持った日本だからこそ持ち得た生活の知恵です。

こんにち、便利な機械文明の恩恵の中で、つい忘れがちだった日本の生活の知恵を振り返ってみる必要があるように思えてなりません。今、便利な生活の流れの前方に環境汚染の危険信号が点滅しています。

同時に、日本の生活の知恵と共にあった、掛けがえのない日本人の美しい感性が生活の中から影をひそめてしまったからです。

日本の住宅の際立った特徴は、玄関で履物を脱ぎ、室内に汚れを持ち込まない、清潔な床の上での生活にあります。床に直接衣服や肌がふれても、一向に構わないほど清潔に保たれていました。このことが暑い夏をどんなに涼し気な生活にしていたか知れません。不潔な汚れた床の生活と比較した時、清潔さ程涼し気な美しいものは他にないことがわかります。お客様をお迎えするのにも一人に一枚の夏用の座布団が用いられます。綿や麻の布を使った薄手の小振りの座布団です。模様も簡素で涼し気な配慮がなされ清潔感と涼しさを演出しています。

暑さをしのぐ知恵は風通しに見られます。風通しを良くするために壁の代りに戸障子を用いて部屋を仕切りました。固定した壁では風を通しませんが、戸障子を解放すれば室内に風を通せるからです。特に締め切ったまま、風の通るよしず戸は見るからに涼し気で、夏の暑さをしのぐ日本人の完成が感じられます。

風通しと清潔感は一体です。風通しの良い部屋は、湿気で発生するかびによる不潔さと、かびのいやな臭いが室内にこもることを防ぐからです。

家の周囲を通る風や、室内を通り抜けるかすかな風が奏でる「風鈴」の涼し気な音色は風を知らせ暑さを忘れさせてくれました。しかも、種々な音色で各地の違った風土を味わい楽しんだことも想像できます。

すだれは、夏の暑い日射をさえ切り、室内を落ち着かせます。また、そのすだれが描き出す日影模様は、特別な涼しさを演出してくれます。
降幡廣信