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住まい再考

【178】 桐


昨年六月、下伊那の宮沢さんという方から、桐について質問がありました。「大切なものを収納する箱やタンスに使われているのは、防湿と同時に防虫にも効果があるからではないだろうか。庭の桐の木の下には雑草が立たぬことから、毒素でも発散しているのでは。肩凝り解消のために、桐の木の枕を使ったところ効果があったことから、桐は何かを発散しているのではないだろうか」という事でした。

それを実証する証拠を見出すことは残念ながら私にはできませんでした。しかし、桐の木は使用前に水か雨に晒して、樹液を充分抜き取らないと、使用してから桐の白さが消え、醜い色に変色してしまいます。内部に化学物質を多く含んでいる証拠かも知れません。

桐は大変軽い木材であると共に、成長が早い木材です。昔は、娘が生れたときに桐の苗を植えると、結婚の時には大樹に成長し、嫁入りダンスに間に合わせることができたと云います。

桐の特徴は、軽いだけあって断熱性に富み、湿度を調整する力もあることです。ですから、衣類等を入れる高級なタンスに使用したのです。たとえ欅等のタンスであったとしても、引き出しの中には桐を使っているのもそのためです。桐のタンスには鉄の引手や金物が使われています。白い桐に対して、真黒な鉄の色の対比。柔らかい桐の質感に対する堅い鉄の質感の対比は桐のタンスをどんなに強く上品にしているか知れません。

桐は住宅の内部にも多く使用されてきました。その原因は、肌がなめらかな上、白くて上品な材質を持っているからです。桐は、高級な住宅の天井板や、二間続きの和室にある欄間、そして床の間の落し掛け等に使われてきました。桐の欄間の巾広い板は大変高価なものです。桐の木の中心部には必ず空洞が入るため巾広い板がとり難いからです。

桐の花の意匠は、昔から日本の住宅の各所に使われてきました。特に襖紙には桐の意匠の傑作が多く見られます。京唐紙にも、江戸襖紙にも数多くの桐の意匠がみられます。五三の桐五七の桐、光琳桐というように。桐が日本人に愛好された証拠です。
降幡廣信