会社概要

住まい再考

【186】 住まいと効率


効率を第一として追い求めている今日の社会生活では、いやが上にも人の心に重い付加がかかります。それがストレスとなって心に溜まります。そこから今日の社会現象の多くが顔をのぞかせています。

そんな社会であればこそ、心を癒してくれる住まいが求められている筈です。しかし今日の住まいも、社会の流れと歩調を合わせるかのように、便利さ、即ち効率を追い求めているように思えてなりません。

照明を例にとってもそのことがわかります。我々の住宅では、白熱電球に代って蛍光灯がめっきり多くなりました。蛍光灯は効率が良いからです。効率を第一とする生涯の場では理想的な証明でしょう。しかし、安らぎを第一とすべき住宅で蛍光灯はいかがなものかと思います。住宅の理想の照明は白熱電球なのです。

その理由は、部屋自体にも、又その中にある総ての物を立体的に見せて陰影を生じるからです。蛍光灯は明るくは見せますが、平面的な証明です。部屋の隅々まで明るさが均一化して陰を消してしまいます。部屋の中には色々の物が置かれています。特に居間はそうです。暖か味のある白熱電球の照明が室内の色々の物をフレッシュに浮き立たせてくれているのです。

谷崎潤一郎は「陰翳礼賛」の中で、「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。夜光の珠も暗中に置けば光彩を放つが、白日の下に曝せば宝石の魅力を失う如く、陰翳の作用を離れて美はないと思う」と云っています。

ヨーロッパを旅した時、夜の住宅からもれる照明も、ホテルの照明も日本と違って白熱電球による照明が断然多いのに感心させられました。住宅は地味でしたが彼等は効率のみを追い求めるのではなく、生活の豊かさを求めていることを教えてくれました。そんな家庭の家族団らんの居間からは、白熱電球によるなごやかな雰囲気の中から家族の笑い声が聞こえるかのようでした。

こんな住まいが今日の日本に求められている住まいではないでしょうか。むしろ地味で心暖かさが漂う住まいです。
降幡廣信