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住まい再考

【193】 季節感


寒い冬から暖かい春に変わると、心も開放され、生活にも変化がもたらされます。暖かい部屋中心の生活が家一杯を使った伸び伸びした生活に変わります。同時に新しい空気が家の隅々にまでいき渡り、生活が一新したかのようです。このように季節感を家の中に採り入れて、一年の四季を独特の感性によって、日本人は、美しく楽しんで生活してきました。

しかし、今日は、座式の生活が椅子式になり、壁が増えて引戸がドアに変わり、バリアフリーになって床面の段差が解消され、さらに暖房設備が変化してきました。

このように、日本の住宅の内容が効率的に変わる中で、そこで行われてきた季節感を採り入れた生活の内容が薄れて、メリハリの乏しい生活になりつつあることに、一抹の淋しさを感じます。

壁が多くなって部屋毎に独立した室内は、一つ屋根の下が一室になったかのような、かつての暖かい季節の快い開放感は難しくなりました。又、引き戸に替わって登場したドアの閉鎖性は開け放した時、格好のつくものではありません。

最近、バリアフリーが話題になっています。床の段差をなくして、足腰の弱った老人のために対応しようというのです。床の段差は時と場合によっては邪魔なもので、平坦の方が使い易いということは事実です。

しかし、段差は、開放的な日本の生活のための床の仕掛けとして、大きな意味をもっていました。

玄関の土間と床に、廊下と部屋に、座敷と床の間にというように、性格の違いと上下の関係をそこの段差で表現していたのです。建具が開き放たれて内部が見えていても、入口の段差があることで、そこに戸が建てられている時と々効果があります。だから開き放たれていても一向に苦にならない落ち着きがあるのです。そこが、壁で囲まれていて床に段差のない西洋住宅と、日本の住宅の大きな違いです。

春と秋の季節感は、解放的にできている日本の住まいによって初めて味わえる、日本人の独特の生活感ということができます。
降幡廣信