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住まい再考

【197】 室礼(しつらえ)とインテリア


今年の夏は、いかにも日本の夏らしい蒸し暑い夏でした。九月の後半になって一寸しのぎ易くなったかと思ったら束の間、もう肌寒い秋の訪れとなりました。やがて霜柱が立って冬です。

このような年間の気温の変化が、日本にはっきりとした四季をもたらし、日本に固有の生活を生み出してきたのです。

それが室礼(しつらえ)です。一日の中で、また春夏秋冬という時の変化と折々の場面に合わせて調度を整え、生活を組み立てて暮らしてきたのです。

季節の変わり目は特に顕著です。今朝なぞは炬燵が恋しく感じます。夏のちゃぶ台が務めを終えて、炬燵に変わるのも時間の問題です。夏の日差しを遮ってくれたすだれも外されて、夏が去ったことを知らせています。

座布団や寝具にも変化が見られます。軽くてさらっとした夏物が、冬に向かって徐々に厚みを増していきます。床の間の掛軸も変ります。部屋に飾られる花は日毎に変化します。

年始め、桃の節句、端午の節句というように、伝統的な年中行事でもそれぞれの室礼によって、室内が変ります。行事の期間が終わって、室礼が取り除かれた後には、云い知れぬ寂しさが漂います。室礼とともにあった人の気持ちが無くなった寂しさです。

このような室礼の歴史は平安時代の昔からの、主婦中心の作業でした。当時から女性は美しい室礼が出来るように教養を高め、感性を磨くための手習いをしてきました。室礼のための調度品が、軽くて持ち運び易く、場所をとらないのは女性のためです。座布団、寝布団、屏風、衝立、座卓、お膳、すだれ等どれをとっても女手で動かせて収納できるものばかりです。

一方、欧米の家具調度は大きくて立派で重々しくて、一度据えたら場所を変えることはありません。日本的な室礼は必要はないのです。

インテリアは、美しいこと、住む人の気持ちが伝わることが大切です。住む人の好みで買ったものでも、そこに置かれ放しでは気持ちは伝わらないことになります。

日本の伝統の室礼からは、物の美しさと共に、主婦の教養と感性が伝わってインテリアを生き生きとしたものに仕立てます。

あわただしい時代で、昔のように室礼に時間が取れない昨今です。しかし室礼によって、日本人独特の感性を磨きながら、豊かな生活を味わって欲しいものです。

降幡廣信