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住まい再考

【199】 視覚の修正


われわれ人間の視覚には不正確なところがあります。設計の図面と実物とでは物の大きさが違って見えることが多々あります。特に高いところへ取り付けるものは細く見えるために、この位太目にすればちょうど良いだろうと思って用意してもまだ細かったり、ときには太すぎて重く感じたりすることがあります。これを間違わないようにするためには、視覚を修正する基礎を身につける必要があります。

和風建築ではバランスを間違わないために昔から木割りによって室内の部材が決められました。その上視覚の修正がなされてきました。それは、極めてデリケートな日本的な配慮と申すことができます。

水平面は中央部が下がって見えることから、中央部をやや上げることで修正がなされてきました。

天井では六帖間で18ミリ、八帖間で24ミリ程、中央部を釣り上げておきます。これによって天井は水平に、軽やかに見えます。

長い鴨居や敷居も、水平に取り付けると、中央が幾分下がって見えるのです。そのため中央部で千分の一程釣り上げて取り付けるのが定石です。

鴨居が一間より長くなると、中央に束を付けて固定します。束を柱と同寸法にすると短いために柱より太く不格好に見えます。そのために鴨居の長さが二間の時は、柱の0.95倍、一間半の時は柱の0.9倍くらいにすることが行われてきました。

瓦屋根において、屋根面を上から下へ一直線に葺くと軒先が少し下がって見え、重く感じられます。軒先を少々上げた方が見映えがします。真直ぐより20~24ミリ位です。

日本は昔から高級な建物の屋根は、棟から軒先へ向かって「てり」を付けました。また、寄棟の軒は中央から両端へ向かって「そり」をつけました。これにより屋根が軽く優雅に見えるからです。

屋根を支えている独立柱と壁が付いている柱とでは、見える太さが違います。独立性は、壁の柱より1割~1.5割太くすると、バランスが取れて安定感が出るのです。

床脇の違い棚は、手前が幾分下って見えます。それを修正して前を上げて取り付けると棚の面が水平でなくなって不安定になります。それをさけるために奥を幾分分厚い板にすることが行われてきました。

降幡廣信